遺産分割調停と審判

(1)裁判所を利用した遺産分割

遺産分割について法定相続人全員による協議がまとまればベストです。しかし,相続人の一部が頑なに分割案に反対する場合や,そもそも話合い自体に応じてくれない場合には,裁判所を利用した遺産分割を検討しなければなりません。具体的には「遺産分割調停」「遺産分割審判」となります。

もっとも,前提問題として,そもそも住民票記載の住所に居住しておらず所在不明な場合には不在者財産管理人を選任しなければなりませんし,認知症などで判断能力がない場合には成年後見の申立等を検討する必要があります。

(2)遺産分割調停

遺産分割調停は,家庭裁判所に,相続人の1人又は複数人が,残りの相続人を相手に申し立てます。調停は月1回程度のペースで行われ,調停委員が仲介者となり,双方と交渉を進めます(遺産分割がまとまるようにアドバイスをしてくれます。)。調停がまとまったら,調停調書にその内容がまとめられ,それに基づいて相続を行うことになります。

(3)調停のポイント

遺産分割調停では,原則として可分債権(預貯金や生前の払戻)や可分債務(借金など)は対象になりません。また,葬儀費用についても対象ではありません。法律上は,可分債権・可分債務は法定相続分によって当然に相続するものですし,葬儀費用は死後に支出するものであり遺産ではないからです。もっとも,相続人が可分債権・可分債務や葬儀費用も調停で協議すること自体に同意した場合はこの限りではありません(実務的にも調停で調整することは非常に多く,申し立て自体が受け付けられないということではありません)。

調停はあくまで話合いですので,法律や判例に拘束されません。ただし,争いがある点については,あくまで法律に従った分割を調停委員に求められる傾向にありますので,いかに主張や証拠を組み立てられるかが重要になります。

また,寄与分などについて争いがある場合は,遺産分割調停とは別途に寄与分を定める調停・審判を行う必要があります。

(4)遺産分割審判

遺産分割の調停が成立しなかった場合,自動的に審判手続きに移行します。

審判では,審判官が,双方の主張を聞いたうえで審判を下します。

審判に不服がある場合は,2週間以内に即時抗告をする必要があります。