相続が発生して,遺産分割を行う場合,大きく分けると次のとおり2つの流れがあります。
相続発生
→[ケース1]遺言がある場合:原則として,遺言の内容に従って相続する
→[ケース2]遺言がない場合:相続人間で,遺産分割協議の上,相続する
[ケース1]遺言がある場合
(1)基本的な流れ
被相続人の遺言がある場合は,原則として遺言の内容に従って相続を行います。
自筆証書遺言の場合には家庭裁判所へ「検認」を申し立てる必要があります(公正証書遺言の場合は不要です。)。「検認」とは,家庭裁判所が自筆証書遺言の偽造・変造・隠匿を防ぐため,遺言書の存在および形式について調査する手続です。
(2)遺言書の形式に不備がある場合等
特に自筆証書遺言では,形式に不備がある場合(全文が自筆でない,押印がない等)や認知症等で判断能力がない状態で作成された場合には,遺言の効力が認められないことがあります。
(3)遺言書の内容と異なる分割
原則として相続人全員の同意があれば,遺言書の内容と異なる分割を行うことも可能です。
もっとも,相続人以外の第三者へ遺贈する内容等がある場合には第三者の放棄が必要ですし,遺言執行者が定められている場合には遺言執行者の同意が必要となります。
(4)遺留分
兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分があります。遺言の内容が遺留分を侵害している場合には(特定の法定相続人のみに相続させるなど),遺留分減殺請求をされる可能性があります。
[ケース2]遺言がない場合
(1)基本的な流れ
被相続人の遺言がない場合には,法律によって定められた相続人(法定相続人)全員による遺産分割協議を行うことになります。協議がまとまった場合には,その内容を遺産分割協議書にしておくことが多いです(相続手続の中には遺産分割協議書の提出が求められるものもあります。)。一般的な遺産分割の流れは次のとおりです。
①相続調査
遺産分割協議にあたっては,相続人(法定相続人)と相続財産の確定が必要です。
②遺産分割協議
相続調査によって,相続人と相続財産が確定したら,遺産分割協議を行います。
これは,相続人による話し合いです。話し合いがまとまった場合は,その内容に基づいて遺産分割協議書を作成することが多いです。
③遺産分割調停
遺産分割協議がまとまらない場合等には,家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。調停とは,簡単に言うと,調停委員を仲介者とした交渉です。
遺産分割調停では原則として可分債権(貸金,相続開始後の利息・賃料など)は対象となりませんが,相続人が合意すれば調停の対象とすることも可能です。
なお,以前まで預貯金についても可分債権とされていましたが,今後は遺産分割調停の対象となります(平成28年12月19日最高裁判決)。
調停がまとまった場合には,調停調書が作成されます。
④審判
調停が不調(不成立)になった場合,審判の手続きに移行します。
審判では,審判官(裁判官)が,双方の主張を聞いたうえで,審判を下します。
審判に不服がある場合は,2週間以内に抗告することができます。
遺産分割を行う際,揉める可能性がある場合は,上記の解決までの全体像を見越した上で,最適な解決方法を考える必要があります。協議で解決するほうが有利になるのか,調停・審判を行ったほうが良いのか,一人ひとりの状況によって,ケースバイケースです。
弁護士にご相談いただいた場合には,これらの全体像を踏まえて,最適な解決方法をアドバイスさせていただきます。